シンガポールは低い法人税率だけでなく、さまざまな税優遇制度・控除・免除を組み合わせることで、合法的に税負担をさらに最適化することができます。本記事では、シンガポール法人を運営する上で押さえておくべき節税ポイントを5つ解説します。
POINT 01
スタートアップ税免除制度を最大限に活用する
設立から最初の3課税年度は、課税所得の最初のSGD 100,000について75%、次のSGD 100,000について50%が免除されます。適用条件(株主20名以下・個人株主要件など)を設立前に確認し、株主構成を正しく設計することが重要です。この制度を活用するだけで、設立初期の税負担を大幅に抑えることができます。
POINT 02
キャピタルアローワンス(減価償却相当)を適切に計上する
シンガポールでは、事業用の機械・設備・ITシステム・商業車両などへの投資に対して、キャピタルアローワンス(Capital Allowance)を費用として計上し、課税所得を圧縮できます。一括償却(Section 19B)や3年均等償却(Section 19)など複数の方法があり、事業の状況に応じた選択が可能です。オフィス用の機器やクラウドサービスへの投資も対象となる場合があり、見落としがちな節税機会です。
POINT 03
研究開発(R&D)税制優遇を活用する
シンガポールはイノベーション促進のため、適格なR&D活動に対して通常の150%(場合によってはそれ以上)の費用控除を認めています(Enhanced Deduction for R&D)。テクノロジー・製品開発・プロセス改善などに取り組む企業は積極的に活用を検討すべき制度です。エンジニアの人件費・外部委託費・試験費用なども対象となる場合があります。
POINT 04
日星租税条約を活用した資金移動の最適化
日本とシンガポールの間には租税条約が締結されており、配当・利子・ロイヤルティの源泉徴収税率が軽減されます。例えば、シンガポール法人から日本の親会社へ支払うロイヤルティや技術指導料(マネジメントフィー)については、租税条約上の優遇税率が適用される場合があります。ただし、これらの取引は移転価格税制の観点から独立企業間価格(アームズ・レングス原則)に基づいて設定する必要があります。
POINT 05
2026年予算:AI投資への400%控除(Enterprise Innovation Scheme拡充)
2026年2月に発表されたシンガポール予算において、Enterprise Innovation Scheme(EIS)が拡充され、AI関連支出に対して400%の税控除が適用されることになりました。YA2027・YA2028の2課税年度を対象に、1課税年度あたり最大SGD 50,000の適格AI支出に対して適用されます。
例えばSGD 10,000のAIツール・システムに投資した場合、SGD 40,000分が課税所得から控除され、法人税率17%で計算すると約SGD 6,800の税負担軽減効果があります。具体的な適格支出の範囲については、IRASが2026年6月中旬を目途に詳細を公表する予定です。現時点では正式なガイドラインが未発表であるため、自社の支出が対象となるかどうかは、公式発表後に専門家と確認することを推奨します。
なお、この新しいAI投資控除については、通常のEISとは異なり、現金還付(キャッシュペイアウト)への転換オプションは適用されません。また、通常のITコスト(ルーティン業務のシステム費用等)とAI関連投資を明確に区分して記帳することが、控除を適切に受けるための重要な実務ポイントとなります。
POINT 06
GSTの登録タイミングを戦略的に判断する
年間課税売上がSGD 1,000,000を超えると GST登録が義務となりますが、任意で早期登録することも可能です。事業で支払ったGST(仕入税額)を還付請求できるため、設備投資や外部サービス調達が多い創業期には早期登録が有利になるケースがあります。一方、顧客がGST非登録の一般消費者である場合は、任意登録により価格競争力が下がる場合もあり、事業モデルに応じた判断が必要です。
まとめ:節税は設立前の設計が9割
シンガポール法人における税務最適化は、法人設立後に対応するより、設立前の段階で株主構成・事業スキーム・資金移動の設計を行うことが重要です。特にスタートアップ免除の適用要件は株主構成に依存するため、設立後に変更することが難しい場合があります。
また、日本の外国子会社合算税制(CFC税制)への対応も並行して検討する必要があります。シンガポール法人が「特定外国子会社等」に該当する場合、その所得が日本親会社の所得に合算課税される可能性があります。
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